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Eiger 3970m from Moench 4099m
2006年8月11日、ツェルマットをあとにして、電車にてブリッグ、シュピ−ツ、インターラーケンと電車を乗り継ぎ、グリンデルヴァルトに２時頃着いた。グリンデルヴァルトは曇り、雨がパラパラして不吉な予感がした。ホテルに荷物を置いてから、12日からのアイガー東山稜登山のために、ガイド案内のグリンデルヴァルト・スポーツに行った。危惧していた通り、アイガーは雪がベッタリとつき登山はできず、待機となった。ついていない！
12日は雨、時々曇り。13日は一日中雨！アイガーは絶望的となった。12日に、ツェルマットのテント場で知り合いになった熊田さん夫妻がグリンデルワルトにいると聞いていたので、２ヶ所あるテント場を探していたら、日本製のそれらしいテントがあった。声をかけるとやっぱり熊田さん夫妻で、感激の再会となった。雨ばかりでお互いにすることもなく、それから何回も会い食事をごちそうになった。
14日は雨も上がったので時間つぶしにハイキング。フィルストまでロープウェイで上がり、バッハアルプゼーへ。バッハアルプゼー付近は降雪後の雪が残りきれいだった。フィルストにまた戻り、シュレックフェルトまで歩いて下りた。
歩くのも単調になり、ロープウェイに乗ろうとすると、出札のおっさんが短気で気難しい人だった。財布にコインが多くたまり重くてかなわないので、それを先に使ってロープウェイ代を払おうとした。しかし、慣れない悲しさですぐにはいくらのコインかわからないので数えるのに時間がかかる。それを見ながらイライラしたおっさんは、財布の金を見せろ、自分がとってやると言った。恐らく頭の悪い東洋人がノロノロしているわい、と思ったのであろう。嫌な予感がしたが、金を見せると案の定、５フランなどの大きなものを先に取った。５フランはホテルのコインロッカーで必要な重宝なコインである。そこで私はそれは必要であるから返せと言った。彼は更に不機嫌になり、返そうとしない。そこで頭にきた渡しは、エイ面倒とばかり１０フランか２０フランの札を出し、返せと言った。スイス人は一般に国際観光地のくせに愛想が悪く、不愉快になることがある。余談であるが、宿泊したグルンドの近くのレストランのおばさんは例外的に愛想が良く、気に入って２回も食べに行った。更に余談であるが、スイスのレストランは高いので殆どスーパーで惣菜や果物を買って食べていた。
スイス人で不愉快になった私をもっと不愉快にさせた日本人がいた。シュレックフェルトでたまたま乗ったゴンドラに二人の熟年の日本人夫婦が乗っていた。途中で乗ったのだから、失礼します、とか何か言って乗れば良かったかも知れない。恐らく二人だけでラブラブでゴンドラに乗っていたのを闖入者が邪魔をしたかも知れない。次のボルト駅で、グリンデルヴァルトと勘違いした私は降りかけると、どうも違うようだ。ここはグリンデルワルトではないんですかと訊ねると、老婦人が不機嫌そうに、乗って来ないで下さい、とのたまわった。唖然として、すぐには怒りの言葉が出なかった。あんたのような島国根性の狭量のアホな日本人がいるからダメなんだと、捨て台詞を言って遣りたかったが（品の良い私はそんなことを言う筈がないが）、時遅くゴンドラは行ってしまった。
悪いことがあれば良いこともあるものである。次に来たゴンドラもたまたま１人乗りの日本人であった。今度は丁重に、乗っていいですかと言うと愛想良く、どうぞと言った。安心してしばらくして話をすると大の鉄道ファンで、今回はスイスに来たらしい。沢山の登山鉄道があるスイスは鉄道ファンにはたまらない国のようだ。話す感じも良く、前の意地の悪いオバンとは大違いであった。
山のホームページがつまらないことで時間を費やしてしまった。
さて、雪のためについにアイガー東山稜の登山は中止となった。昔、槙有恒が初登攀し、槙さんの本をワクワクして読んでいた私にとっては、マッターホルン登山よりアイガーの方に憧れていただけに残念であった。東山稜登山の写真を見ていたら、ミッテルギ小屋の辺りは殆ど雪がない。今は雪だらけで、アイスメーアから小屋までも雪ベッタリ。これはあとで登山電車やメンヒから見た時もそうだった。１４日に代替の山として、メンヒとユングフラウに変更した。しかし、１６日予定のユングフラウも天候悪化の恐れがあり、メンヒに登ったあと現地でガイドが決めるとのことであった。ここまでくるとダメならダメで仕方がない、といった開き直りである。
８月14日、まずはともかく登山電車でユングフラウ・ヨッホに向かった。駅に着くと、案内所で話を聞いていた通りレストランの前にガイドがおり、コーヒーを飲んでいた。
ヨッホの駅舎から出ると一面の銀世界。観光客も一杯いる。天気も大変良い。メンヒス・ヨッホとの中間辺りにメンヒの一般ルートの南稜がある。南稜の下にもう1人のパートナーであるドイツ人が待っていた。メンヒ4099ｍまで高度差約500ｍ。難易度：ＰＤ。岩登り�兇泙如▲潺奪�ス、雪／氷45°。頂上近くの稜線はナイフエッジとなっており、高度感があるが、トレースがしっかりとあるので問題はない。ドイツ人は私より1歳年下であったが疲れたのか途中で頂上に行くのはやめてしまった。こちらの体力と技術に感心していた。頂上の眺めは360度素晴らしい。ユングフラウがすぐ近く、アイガーは標高がメンヒより低いので更に下に見える。遠くはマッターホルンが見えた。下りは他のザイルパーティを追い越しながら下った。遠慮なく追い越すのはアルプス流か。
平坦な雪氷原に戻るとガイドがオフィスと連絡をとり明日の天気予報を確認。やはり天候が悪いとのことで、残念ながら、ユングフラウは中止となり、ガイドは先に下山した。私はまず、天気が良ければ止まる筈だったメンヒス・ヨッホ小屋を見に行った。小屋には沢山の宿泊客やハイカーで賑わっていた。そのうち、メンヒス・ヨッホの向こう側の山に雲がかかり始め、天候が悪くなる兆候があった。まだ時間があるので、少しでもユングフラウを偵察しようと、アレッチ氷河を横断した。途中数人が氷河を下から登ってきた。ポーランド人のグループで、ガイドもなく元気な連中だ。彼らからみれば1人で来る日本人のおっさんも元気だと思うかもしれない。ユングフラウも雲で見えなくなり、氷河を渡った所で引き返した。
さて、ユングフラウ・ヨッホ駅は帰る人で一杯であった。昔に比べると観光客は格段に増えているが、輸送能力はそんなに増えていないだろう。30分以上すし詰めで駅で並んで、すし詰めの電車に乗った。行く時は一番電車であったのでまだ座れた。帰りはできるだけ早く乗った方が良い。
８月16日、ユングフラウが中止になったので、時間つぶしを考えた。プフィンシュテークからシュレックホルン小屋に行く道がある。途中アイガー東山稜の下部も見えそうだ。プフィンシュテーク駅からしばらく行くとグリンデルワルト全体が見渡せた。そのうちにアイガーとシュレックホルンの間の深い峡谷が見える。アイガー東山稜の末端は見上げるような高さで落石の音が時々響く。槙さんはどこから東山稜に取り付いたのだろう？シュティーレッグ小屋までは比較的良い道で、人が少ないだけに自然も豊かで、展望も良い。 シュティーレッグから上はガラッと道が悪くなり、ハイキング道から登山道となる。氷河も近くなる。人は殆どいなかった。素晴らしいコースで、前から分かっていれば朝早く起きて、グレックシュタイン小屋まで行ったものを。日本のガイドブックには全然出ていないが、ややワイルドなトレッキングを楽しみたいという人にはお薦めのコースだ。
かくして、グリンデルワルトではメンヒに登っただけでフラストレーションのたまる山旅であった。帰国のため、8月17日にグルンデからグリンデルワルト、インターラーケン、ベルン経由でチューリッヒ空港へ。再びバンコック経由で18日午後成田へ着いた。約2週間で登った山は3つ、登れなかった山は4つで、３勝４敗。アルプス登山は天候次第ということを実感した。しかし、様子は分かったので、次は代理店を使わなくてもテントなどを利用しながら、もう少し安上がりで行けるだろう。
