チュクンからのアイランドピーク
2008年11月から12月にかけて35日間、1人でネパールのNMAピークのライト・エクスペディションとランタン、ゴサインクンドエリアのトレッキングをしてきた記録です。
1.全体期間:11月5日〜12月9日 35日間
2.前半:アイランドピーク 6183m、チュクンリ5550m登山
(1)期間:11月8日〜11月19日 12日間 (カトマンズ起点) (2)編成:ガイド 1人、ポーター2人 (3)日程
11月8日
カトマンズ - ルクラ- ナムチェバザール 11月9日 ナムチェ -
パンボチェ 11月10日 パンボチェ−ディンボチェ 11月11日 ディンボチェ -
チュクン 11月12日 チュクンリ順応登山5550m 11月13日 チュクン-
アイランドピークBC(約4950m)−アイランドピークHC(約5400m) 11月14日 アイランドピークHC−アイランドピーク6183m−アイランドピークHC経由BCへ 11月15日 BCにて休憩、イムジャ・ツォ(氷河湖)散策 11月16日 BC−チュクン-
ディンボチェ 11月17日 ディンボチェ-ポルツェ- ナムチェ 11月18日 ナムチェ - ルクラ 11月19日 ルクラ-
カトマンズ
(4)アイランド・ピーク(イムジャ・ツェ)登山 チュクンから山の展望を楽しみながら3時間ほど登ると、アイランドピークBCがある。BCは地球温暖化により氷河湖が拡大し、決壊の恐れがあると指摘されているイムジャ・ツォからサイドモレーンを隔てた場所にある。標高は5000m弱。BCには予想通り沢山のテントがあった。大手のエージェントはテントを張って場所をおさえているらしい。 BCから少し行くとアイランド・ピークの登りとなる。チュクンから来ると疲れた体には傾斜がきつい。我々はハイキャンプ(約5400m)にテントを張った。ハイキャンプのテントは3〜4隊のみであった。
ハイキャンプは風に舞う粒子の大きな砂ぼこりがひどい。テントの入口を空けておくとテント内がすぐに砂だらけになる。BCからイムジャ湖上流方面の砂は粒子が細かく、風に舞い空がかすむほどである。BCはイムジャ湖のサイド・モレーンにガードされているため砂ぼこりはやや少ない。 ハイキャンプの水場は遠く、1時間くらいかかる。一方、BCの水場は上部の氷河の近くにあり10〜20分くらい。
ハイキャンプを午前3時に出発した。BCから直接登る多くの登山者は朝1時か2時頃に出発している。ハイキャンプからは月明かりの中をひたすら登る。やがて薄明るくなり、ややフラットな雪稜となった。標高は確認していないが5700mくらいか。ここでトレッキングシューズから登山靴にはき換え、アイゼンを装着。ロングスパッツのバックルがなかなか締められずに苦労した。
以後は余り傾斜のきつくない雪上、氷河の登るとなる。所々クレバスが口をあけている。傾斜がきつくなると雪壁となる。 アイランドピークの主稜線に出る雪壁は60〜70度前後、高度差が約200mあるがフィックスロープが複数列あった。頂上直下の稜線はやや高度感があり緊張するが比較的容易に登れる。 沢山の欧米の登山者がいたが、日本人は私1人だけであった。 ハイキャンプに下山後、テントをたたみ、BCに移動した。翌日はローツェ南壁のBC方面に行こうと思ったが、疲れもありイムジャ・ツォ巡りだけでやめ、休養。
アイランド・ピークはNMAピーク(いわゆるトレッキング・ピーク)の中では最も人気があり、ダントツに登山者の多いピークである。チョーオユーやエベレストへのトレーニングとして登る人も多い。外国人の中には雪山もろくに登ったことのない人も来るようだ。チュクンのロッジにはレンタルの靴やアイゼン、ピッケル、安全ベルトなどが置いてある。ガイドのパサンはプラスチック二重靴とアイゼンをリースした。ガイドに装備料は払っているが、それは生活費に消えるであろうパサンは高価な装備は持たず、レンタルでしのいでいるかもしれない。因みに二つの装備のレンタル料は、一日当たり400ルピーとのことである。
(5)イムジャ・ツォ イムジャ・ツォは氷河湖決壊洪水の恐れがあるということで、朝日新聞やNHKで大々的に報道された。また以前から日本の氷河調査隊を案内しているエージェントやガイドから話を聞いていたため興味を持っていた。イムジャ湖の下流にも2ヶ所ほど昔は氷河湖だったと思われる場所があり、氷河湖が決壊しながら上部に移動していった様子がうかがえる。 氷河湖を支えている堰堤の部分はまだかなり堅固そうで、水面との高度差もあり、素人目にはすぐには決壊しそうにはないように見える。ただし、堰堤の堆積土砂の下にはまだ氷河があり、これが解けたら危なさそうだ。また、氷河湖の周囲は常に土砂崩れを起こしており、大きく崩れたら水面が一気に上昇するかもしれない。
(6)チュクンリ 標高5550mのチュクンリはどういう訳かNMAピーク33座の一つである。登山は正式にはNMAに申請し、登山許可料を払わないといけない。しかし、標高はカラパタールと大差なく、氷河もないし、テントも不要でチュクンのロッジから往復4〜5時間で容易に登ることができるため、NMAには残念だが許可を取って登る人は少ない。アイランドピークへの高所順応で登る人も多い。 一方、展望は素晴らしい。エベレストが見えないことを除けば、カラパタールやゴーキョ・ピークに勝るとも劣らない。ローツェの岩壁が眼前にせまり、アマダブラムやオンビガイチャンも間近である。日本人トレッカーはカラパタールやゴーキョ・ピークなどを目指す人が多いが、欧米人はチュクンリにも沢山来るし、三つをまとめて登ったり、その間を東西に結ぶチョラ・パス越えやコンマ・ラ越えもしている。ヒマラヤのトレッキングに関しては、日本人は欧米人に比べて非常に保守的で、訪れるエリアも限られている。ガイドブックなどの情報が少ないのが一因であるし、集客可能なポピュラーな場所しか行かないエージェントに連れて行かれるだけの日本人が歯がゆい。
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