アンナプルナ・サーキットの山

アンナプルナ・サーキットの山

Muntain Views around the Annapurna Circuit

　　アンナプルナ・サーキットはアンナプルナ内院を時計の中心として、アンナプルナ・ヒマールの周囲を回る。東にはマナスル三山、西にはダウラギリを望む。また、東側はマルシャンディ河沿いに歩き、西側はカリガンダキ沿いに歩く。トレッキングの最高地点はトロンパス５４１６ｍである。アンナプルナⅠとダウラギリの８０００ｍ峰にはさまれたカリガンダキ河のダナの辺りは、両峰からは６５００ｍ以上もある深い谷底である。
　　東側のマナンはチベット風の風俗が残る村である。空港のあるフムデからマナン、トロンパスにかけての山の景色はすばらしい。ポカラからフムデに飛行機はあるが1日1便のみであり、雨季は飛ばない。何よりも、悪名高きロイヤルネパール航空のため、乾季でも突然キャンセルされたりして不確実なのが辛いところである。時間のある人はベシサハールから歩いた方が確実である。
　　西側の拠点はジョムソン。こちらもポカラから飛行機が飛んでおり、便数も多い。雨季は欠航することも多く、何日も待たされることがある。しかし、乾季にはアンナプルナ連山とダウラギリを見ながら素晴らしい山岳風景を楽しめる、山岳遊覧飛行でもある。午後はカリガンダキに南からの強風が吹くため、飛行機が飛ぶのは午前中だけだ。カグベニからジョムソンに午後に向かう時には強風による砂塵対策が必要となる。
トゥクチェからマルファ、ムクチナートは河口慧海がチベット潜入の際たどった道である。カグベニから北のローマンタンのツァーランで慧海は1年ばかり住み、モンゴル人の博士からチベット仏教や修辞学の講義を受けた。またチベット潜入の道を探ったり、チベット潜入に備え登山の練習や体を鍛えた。この間にチベット人の習慣にも慣れた。その後、マルファに戻り、アダム・ナリンの家で約3ヶ月滞在の後、ダウラギリの北方からチベット国境へ向かうのである。アダム・ナリンの孫に当たる人が現在マルファでロッジをやっており、「河口慧海記念館」も開いている。頼めば見せてくれる。トゥクチェで慧海が泊まった家はアップルブランデーなどの蒸留酒製造所をやっており、頼めば奥さんがブランデーを試飲させた後、部屋を見せてくれる。
ジョムソンからトゥクチェ一帯は日本人の努力により日本並みの美味しいりんごの産地である。またアンズも多く、春はアンズの花が美しい。余談だが、ジョムソン側からトゥクチェに入るゲートを通ったすぐ右に新しいロッジがあり、オランダ人とタカリの奥さんの夫婦がやっている。そこのケーキはオランダ仕込みか絶品である。

　　ここで、地質学の話を一くさり。興味の無い人は飛ばしてよい。
　　ヒマラヤの起源はインド亜大陸がユーラシア大陸と衝突し、ユーラシア大陸に潜り込み徐々に高くなり、今日のヒマラヤ山脈が形成された。インド亜大陸はオーストラリアと共にオーストラリア・インド・プレートに乗っており現在でも北に移動している。約3億年前までは地球の大陸は一つに固まっており、パンゲアと呼ばれている。約1億5千万年前はユーラシア大陸と北アメリカ大陸は別れ北に移動し、残りの南極大陸、南アメリカ大陸、アフリカ大陸、インド亜大陸とオーストラリアは南極からやや北に固まり、ゴンドワナ大陸と呼ばれている。その後ゴンドワナ大陸を構成する各大陸はプレートの移動と共にそれぞれ分かれた。インド亜大陸は北北東に移動を続け、ユーラシア大陸との間にあった、地中海とつながっていたテーチス海と呼ばれた海がなくなったのは、約４５００万年前である。ヒマラヤ山脈の隆起は約1200万年前から始まり、約１７０万年前のヒマラヤ主稜線の高度は５０００ｍ近くであったようだ。従って、ヒマラヤは非常に新しい山である。現在でも北への移動と隆起、侵食を繰り返しながら高度をあげている。
　さて、エベレストを初めとしてヒマラヤは昔、海であった。ジョムソン一帯も例外ではなく、テーチス海といわれる海の底である。そのため、この辺はアンモナイトの化石や二枚貝の化石、リップルマークと呼ばれる波の波紋が砂浜に残った生痕化石が見られる。アンモナイトは１．５億～１億年前のジュラ紀や白亜紀の代表的な化石である。アンモナイトの化石はジョムソン街道からポカラの土産物屋によく見られる。また、カリガンダキ川一帯は大陸衝突やヒマラヤ隆起に伴うそれぞれの地層の違いがよく分かり、地質学的にも重要な場所である。最も目を引く一つは、ジョムソンの北のカリガンダキ右岸に聳える大褶曲である。なお、カラパニから北、カグベニにかけてのカリガンダキの広い河原は太古の昔湖があったと考えられている。レテを過ぎてガサの辺りのカリガンダキは一転して、ダウラギリとアンナプルナに挟まれた深い峡谷となる。（参考：在田一則　著　「ヒマラヤはなぜ高い」）　　


Annapurna II　7939m 　Pisangの近くのGreen Lake より。　ピサンからマナンへの別ルートのこの場所は隠れた穴場で、景色がきれいである。	Pisang Peak 6092m NMA(Nepal Mountaineering Association)のクライミングピーク（いわゆるトレッキングピーク）の一つ。フムデより

Annapurna III 7555m Humde(フムデ）より。反対側のポカラから見るのとは全く異なる形をしている。	Annapurna II 7939m Manang近くの展望の良い丘より。近くには氷河湖がある。アンナプルナIIは残念ながら８０００ｍに少し足りないが、形の良い目立つ山だ。

Gangapurna 7454m Manang より。Gangapurnaはポカラからは見えないので余り知られていないが、マナン側からは目立つ山だ。	Gangapurna 7454m Manangの北Gunsang辺りより

Tilicho Peak 7134m Manangの少し北より	Chulu East 6558m 　Yak　Khaｒkaの近くより。NMAクライミングピークの一つ。

Chulu West 6419m Letdarの近くより。NMAクライミングピークの一つ。	Chulu West 6419m Thorung Pass 5416m より

Braga Gompa 約５００年前に建てられた寺。内部には金色に輝く立派な仏像がある。	Thorung Pass 5416m への道左側のピークはネパールの人はThorung Peakと呼んでいる

Thorung Peak 6144m 登頂を狙ったが、途中でシェルパのピッケルが折れてしまい断念。勾配が緩そうに見えるが結構きつい登りであった。	Khatung Kang 6484m 左のピークがThorung Peak。高所では気温が低く、デジカメは殆ど作動しなかった。

Muktinathの上方のPhedi 最近この下に小屋ができ、更に下の谷につり橋が2004年にかけられて便利になってきた。	Mukutinath チベット仏教とヒンドゥー教の聖地。沢山の信者がお参りをする。金持ちで且つ歩くことの嫌いなインド人は、ポカラからヘリコプターをチャーターして来る。

Dhaulagiri 8167m and Tukuche Peak 6920m Muktinath　より。手前はRanipauwaのロッジ群。	Kali Gangaki from Kagbeni カグベニから北へはゲートがあり、旧ムスタン王国のアッパームスタンとなる。入域には特別料金が必要である。

Yakawakang　6482m and Khatung Kang 6484m (right) Khingarの下より。二つの山の間がトロンパス。写真では分かりにくいが、写真の真ん中の辺りがムクチナート。	Nilgiri North 7061m 手前は満開前のアンズの花。カグベニより。

Ripple　mark 波形の痕跡。Kali Gandaki 沿いのKagbeniへ行く途中。	Fold　（褶曲） Jomsomの北、Kali　Gandaki沿い。ヒマラヤの地質学の本によく出てくる、ヒマラヤ造山運動を示す代表的な褶曲。

Nilgiri North 7061m Jomsomより	Ekai Kawaguchi's Home (河口慧海記念館）河口慧海はマルファのここで、チベット出発の前、3ヶ月過ごした。中にベッドやアダム・ナリンのコートなどがある。

Dhualagiri　8167m Lete より	Dhaulagiri 8167m and Tukuche Peak 6920m (right) Lete の南側より

Annapurna I 8091m Lete より。奇しくもこの写真を撮った前日、8000m峰14座の全山踏破を狙う名塚秀二氏がアンナプルナで遭難した。	Annapurna I 8091m Ghasa　の近辺より。霞んだ空と逆光でうまく撮れなかった。

Machhapuchhre 6997m マチャプチャレと朝日。Poon Hill より	Dhaulagiri 8167m Poon Hill より。4月初旬