ヒマラヤ登山学校の山岳博物館 (インド、ダージリン)
Museum in the Himalayan Mountaineering Institute, Darjeeling, India

 

   ヒマラヤ登山学校(Himalayan Mountaineering Institute:HMI) は1954年11月4日に設立された。これは1953年5月のTenzing Norgay とEdmund Hillary によるエベレスト初登頂を記念して、インドの初代首相のネルーの主導のもとに設立され、1957年に現在の場所に移された。HMIはインドの登山活動の中心的存在となっており、山岳博物館と登山学校がある。また、敷地内にテンジンの立派な墓がある。ダージリンに行く機会があったら、是非HMIを訪れて欲しい。
  山岳博物館には英国の戦前からのエベレスト遠征から、テンジンのエベレスト初登頂を中心として、初登頂以降の遠征を含め歴史的な資料が展示されている。日本人としては植村直己の日本人初登頂の写真がある。 また、別館には過去から最近の登山用具の変遷や動物・植物・地質などの自然史コーナーや民族のコーナーがあり、世界の主な山岳博物館と同じような構成である。
   山岳登山学校はガイドの教育・訓練を行っており、一般の人も受講できる。テンジンは昔登山トレーニングのディレクターであった。我がトレッキングの府ガイドもここで訓練を受け、ガイドライセンスを得た。特別に登山用具の倉庫を見せてもらったが、訓練用に使うのであろう沢山のクライミング用具があった。また室内のクライミング・ウォールと、屋外には高さ20mくらいのコンペにも使える立派なクライミング・ウォールがある。

  ダージリンは1900年代の初めから1960年代頃まではヒマラヤ登山の基地であった。これは戦前はネパールは鎖国状態にあり、ネパールからはヒマラヤ登山はできなかったためである。また、チベットは半独立状態であり、閉鎖されていなかったためインド側からチベットに入れたため、エベレスト登山はダージリンを経由してチベットに入り、北側からアタックされていた。また、ネパールから多くのシェルパ族がダージリン周辺に出稼ぎに来ていたが、その高所登山活動の優秀性を認められ、高所ポーターとして活躍したことにもよるだろう。
    戦後、チベットは中国に完全に吸収され(中国はチベットを元々中国の領土とし、解放したといっている)て閉鎖されてチベット側からはヒマラヤ遠征はできなくなった。また、中印紛争のため中印国境は完全に閉鎖された。逆にネパールが開国されたため、ネパールからのヒマラヤ遠征が盛んになったのはご存知の通りである。ネパールのシェルパ達も最初はダージリンのHMIで学んだり、フランスの登山学校に招待されたりして学んだが、経験を積み技術を高めた今はネパールが完全にヒマラヤ登山をリードし、ダージリンの地位は昔に比べれば低下したかもしれない。しかし、HMIの優秀性はネパールに比べてもまだ衰えていない。
   なお、テンジン・ノルゲイはインド、ネパールともそれぞれ自国民だと主張しており、どこの出身かも諸説ある。エベレスト登頂のあと、インドを彼に市民権を与えインド国民にした。一方、ネパールは彼をターメの出身としネパール人だと主張している。実際はチベット出身で、その後、親と共にクーンブに移住し、ダージリンに出稼ぎに来ていて、遠征に採用され活躍するようになったようだ。彼の息子の1人はダージリンで遠征のエージェントをしている。なお、ダージリンやシッキムには今でも沢山のネパール人がおり、ネパール語が共通語のようになっているため、ネパールから行った私にとってはても違和感が少なかった。

<注>これらの写真はHMIの許可を得て撮影したものです。

 

 エベレストコーナーの建物の外観

 エベレスト山が世界最高峰であることが分かった時の、前のインド測量庁長官、Mr Everestの像。彼は固辞したが彼の功績を称え名づけられた。

ヒラリーやテンジンの写真が見える

テンジンの登山用具。エベレスト遠征の時の写真に写っている、羽毛服やオーバーシューズが見える。

テンジンの使用した登山用具

 奥の旗の右側がテンジン コーナーになっている。手前の右は戦前の英国遠征隊の展示

1930年代の英国遠征隊の展示

1952年スイス遠征隊のRmon Lambert 登山靴。恐らく凍傷で足の指を切ったのだろうか、短い靴だ。スイス隊は初登頂には失敗したが、テンジンは8500m位まで登っており、翌年の英国隊の成功に結びついている。

 各国遠征隊の写真。植村直己の写真がある。

左側の壁に日本隊の写真がある

 日本隊のエベレスト初登頂の写真

植村直己

 Yeti(雪男)の頭と手の骨の写真。ニセモノだが。雪男はブラウン・ベアー、つまり熊の仲間らしい。シェルパ族の間では民話の世界の動物でもある。

HMIの屋外にあるクライミング・ウォール。高さは15〜20m位ある本格的なもの。別途、屋内のクライミング・ジムもある。

 ノルゲイ・テンジンの墓

テンジンの墓の正面にあるテンジンの銅像

   

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