台湾・玉山 3952m (2010年3月)

     Yushan (3952m) in Taiwan, March 2010

 

  台湾の最高峰の玉山3952mは登山道がよく整備され、無雪期は難しい山ではない。しかし、冬は緯度の
割には雪が多く、それなりの雪の経験と技術がないと危険でもある。
  玉山の登山には、30日前に入園入山の申請手続きをする必要がある。許可がないと登山はできない。
宿泊の山小屋の収容人数から入山者数の制限があり、また登山ガイドがつくことが条件となるため、3月の
開山日以前は登れないかもしれない。
  今回は中華民国山岳協会により開山祭に招待され、雪の玉山に登ることができた。しかし、この年は
雪が多く、雪に慣れない台湾人が滑落して死亡するという事故が起きた。
  詳しくは後述の登山記録を参照下さい。

         

            YYushan 3952m, on the way to the Tataka entrance gate
                    
  塔塔加登山口への途中からの玉山3952m、3月6日 

         

                       玉山登山口、塔塔加2636m 

           

                      玉山南峰を望む。排雲山荘までの登山道からは玉山は見えない  

         

         シャクナゲ。時期が少し早く、2800mくらいでもつぼみか開きかけだった。

  

  大峭壁。プレートの衝突により海底が隆起した。右の解説板に波の化石があるとのことだが分からなかった。 

        

    排雲山荘、3402m。収容人数約80人。予約をしないと泊まれない。自炊、寝袋持参。
       きれいな小屋だ。 

        

 ガイド の判断で新しい登山道の方に来たが、雪に覆われ傾斜もきつい。帰りは旧ルートの
岩稜帯を下ったが、雪が少なく鎖も露出しており、雪慣れしていない人には安全かも。

        頂上から見た登山者の皆さん。この少し下の雪の急斜面で台湾人が滑落した。

 

       

                   玉山頂上から、南の方の峰々

       

                                       At the peak  of Yushan.
           玉山の頂上にて。普段は風が強いとのことだが、登山中は穏やかな天気だった。

       

               ガイド(旗を持っている2人)と登山隊のメンバー

    

            台湾の玉山の遭難記事 「聯合報」中華民国暦99年3月8日
積雪が凍っていて、滑落。遭難救助隊が到着した時にはすでに死亡していた。12本爪のアイゼンが必要、
雪訓の経験を要す。また、最も重要なことは、無理して登らない、山は永遠にそこにある。・・・・等々が書かれている。

 

 【登山記録】

 中華民国山岳協会の厚意により、玉山(3952m)開山祭と登山に招待された。
・期間:2010年3月5日〜9日
・メンバー:JACの14名とアレンジをして頂いたOさん隊7名の、日本人計21名

・行程
3月5日:成田--->台北--->東埔温泉 布農族(高地の先住民族)の開山祭参加 (一部参加者は中部空港と福岡空港より)
3月6日:東埔温泉--->上東埔にて玉山開山祭--->塔塔加登山口--->排雲山荘(3402m)
3月7日:排雲山荘--->玉山(3952m)--->塔塔加登山口--->玉山国立公園管理処
3月8日:玉山国立公園管理処--->観光をしながら台北へ。夜は中華民国山岳協会の人たちの歓迎パーティ
3月9日:帰国

<登山概要>
3月6日
  東埔温泉から上東埔駐車場にバスで行き、玉山の開山祭に参加した。途中、2009年の台風による大水害の爪あとがいたる所に残る。崖崩れや、道路や住居の埋没・流出の状況はすさまじく、復旧にはまだ相当時間がかかりそうである。しかもこのエリアは1991年の神戸地震より規模の大きい大地震の震源地であった。
  開山祭には、日本以外にもスイスやグァテマラからもゲストが参加。全体の人数も2〜300人と、結構大掛かりな式であった。時間を気にしながら切り上げ、塔塔加登山口まで車で行く。
  塔塔加からの登山道は整備され歩きやすい。排雲山荘までの途中には立派なトイレ小屋が数箇所ある。天気も良く玉山南峰の眺めがよい。あいにく登山道からは玉山主峰は見えない。始めのうちは伐採や火事により樹木は少なかったが、山荘に近づくにつれ大木が目立つようになった。メンバーの体力にはかなり差があり、遅い人に合わせたため予定より1〜2時間遅れて18時頃排雲山荘(3402m)に着いた。なお、メンバーにはベテランが多く、ザックの後ろにつけたピッケルが昔の長いものばかりで驚いた。歴史を感じるが、最近の短いピッケルを持ち、アルパイン系をやる人は少ないようだ。
  排雲山荘は立派できれいな山小屋である。宿泊定員は90名弱。予約をしておかないと泊まれないし、周囲の幕営も禁止。自炊だが我々の場合は付き添いのスタッフが作ってくれた。気温の情報がなく心配だったが、夏用シュラフとシュラフカバーで十分だった。寒いと困ると思い、羽毛服等、色々と持っていったが不要だった。

3月7日
  山荘の明け方の気温は4度Cくらい。朝が早い人が多く、予定より早くから準備でガサガサし始め起こされた。簡単な朝食後、4時40分頃出発。玉山としては今シーズン初めての登山の日である。3500m付近から雪があり、3600m付近でアイゼンをつける。3700mくらいからは夏道や鎖は雪に埋まっており、かなり急な雪の斜面となる。慣れていない人もあり、ザイルがないとやや危ないが、ガイドはお構いなく登っていく。引き返そうという声もあったが、日本人ステップを切りながら登る。やがてひょこっと頂上に出た。10時10分着。頂上付近は風が強いと聞いていたが、この日は穏やかで寒くもない。朝方は曇っていたが、晴れて周囲の山の見晴らしも良かった。
 ところが、頂上で最後尾の人たちが来たら、後続の別パーティの台湾人がスリップして滑落していったのを目撃したとのこと。雪の急斜面と急なガレ場が続くため、とても助かるまい。急に暗い気分になる。技術的に心配な人もあり、下山時には少しあった細いロープをフィックスしながら下った。
 下山の途中、台湾人の親子二人連れがおり、娘が進退窮まり怖くて降りられないから助けてくれと言われた。お父さんのアイゼンも靴に合わずにゆるゆるでテープで止め直していた。娘を助けながら下ろした。途中、ルンゼの雪に遭難者の血が所々飛び散っていた。救助隊の人にも何人か会った。排雲山荘に着くと、遺体は発見され収容されてくるとの情報があった。翌日の新聞にはこの事故が報道されていた。遭難救助や遺体収容の手際も良いようだ。普通はヘリが出動するようだが、この日は午後から曇ったため、ヘリが飛べず、人力による捜索・収容となった。

  玉山登山は無雪期は簡単と思われるが、雪がつくと結構傾斜がきついため注意が必要である。ましてや台湾人は雪に慣れていない人が多く、かなり危険であろう。
  なお、玉山は許可とガイドつきでないと登れないが、無許可で登る人もいるようだ。しかし山荘の定員をオーバーすると泊まるところはない。
 今回は中華民国山岳協会のフル・アテンドで至れりつくせりであった。また、多くの人に知り合うことができた。感謝!
 

 

 玉山地区の気象データ

 

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

最高気温℃

2.9

2.7

5.0

7.6

9.8

11.6

13.2

12.7

12.6

12.5

9.8

5.8

最低気温℃

-5.0

-4.1

-2.1

0.3

2.5

3.9

4.2

4.1

3.5

2.4

0.2

-2.8

平均気温℃

-1.5

-1.1

1.0

3.3

5.5

7.0

7.7

7.5

7.0

6.3

3.9

0.7

降雨日数

8

8

8

14

21

19

18

21

17

13

9

6

降雨月量mm

116

148.9

138.9

248.9

454.2

513.3

361.5

499.4

257.2

152.7

77.8

85.6

                                  中華民国山岳協会のパンフレットより  データ:玉山気象台資料統計表

 

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